この記事でわかること
- LGBTQ+とは?基本的な定義を図解で説明
- 社会課題としての事例
近年、「LGBTQ+」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか?
ニュースやドラマ、身の回りの会話の中でも話題にのぼることがあるかもしれません。
しかし、「LGBTQ+って、具体的にどういう意味?」「最後の『+』は何を表しているの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、「LGBTQ+とは何か?」という基本的な疑問にお答えします。
言葉の定義はもちろん、多様な性のあり方、そして当事者が社会で直面する課題や、企業におけるインクルージョン(誰もが尊重され、活躍できる環境づくり)の取り組みについても、分かりやすく解説します。
社会課題に関心のある方、身近な人をより深く理解したいと考えている方にとって、この記事が多様な性について考えるきっかけとなれば幸いです。
目次
【一覧表付き】 LGBTQ+とは

LGBTQ+は、性的マイノリティ(性的少数者)を表す言葉の一つです。
それぞれのアルファベットが特定のセクシュアリティの頭文字を表しています。
以下で、それぞれの言葉の意味を詳しく見ていきましょう。
レズビアン(Lesbian)
レズビアンとは、性自認が女性であり、かつ性的指向が女性に向く人を指します。
シンプルに言うと、「女性の同性愛者」です。
ゲイ(Gay)
ゲイとは、性自認が男性であり、かつ性的指向が男性に向く人を指します。
「男性の同性愛者」のことです。広義には、同性愛者全般を指す言葉として使われることもあります。
バイセクシャル(Bisexual)
バイセクシャルとは、男性と女性の両方の性に対して性的指向が向く人を指します。
「両性愛者」とも呼ばれます。
好きになる相手の性別が、必ずしも一つとは限りません。
トランスジェンダー(Transgender)
トランスジェンダーとは、出生時に割り当てられた性別と、自身の性自認が一致しない人を指します。
例えば、身体的には男性として生まれたけれど、自身の性別を女性だと認識している場合などがこれにあたります。
性別移行(医学的な処置や、名前・服装の変更など)を望む人もいれば、望まない人もおり、そのあり方は多様です。
クィア(Queer)
クィアは、もともと英語圏で「風変わりな」「奇妙な」といった意味合いで、同性愛者などに対する侮蔑的な言葉として使われていた歴史があります。
しかし、現在では、既存の性のカテゴリー(異性愛、男性・女性など)に当てはまらない、あるいは当てはめたくないと考える人々が、自身のあり方を肯定的に表現するために使う言葉としても広く用いられています。
非常に包括的な言葉であり、性的マイノリティ全般を指す場合もあります。
クエスチョニング(Questioning)
クエスチョニングとは、自身の性自認(自分の性をどう認識するか)や性的指向(どの性に惹かれるか)が明確でなかったり、特定の枠に当てはまらないと感じていたり、探求中である状態を指します。
「まだ決まっていない」「探している途中」というニュアンスを含みます。
+(プラス)とは?その他の性別
LGBTQの後に付く「+(プラス)」は、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア、クエスチョニングだけではカバーしきれない、多様な性のあり方を含んでいることを示しています。
例えば、以下のようなセクシュアリティがあります。
- アセクシュアル(Asexual): 他者に対して性的欲求や恋愛感情を抱かない、またはほとんど抱かない人。
- パンセクシュアル(Pansexual): 相手の性別(男性・女性・それ以外)に関わらず、あらゆる人に性的指向が向く可能性のある人。「全性愛者」とも呼ばれます。
- インターセックス(Intersex): 生まれつき、男性・女性という典型的な身体的性の定義に当てはまらない状態の人。「性分化疾患(DSDs)」とも呼ばれます。
- Xジェンダー(X-gender): 日本で生まれた言葉で、自身の性自認が男性・女性のいずれでもない、あるいは両方である、流動的であるなど、既存の性別の枠に当てはまらないと感じる人。
これらはほんの一例であり、性のあり方は非常に多様です。
「+」は、こうした多様性を尊重し、誰もが排除されないようにという想いが込められています。
LGBTQを理解するためのセクシュアリティの基本

LGBTQ+について理解を深める上で、「性のあり方」を決める要素を知ることが役立ちます。
一般的に、以下の4つの要素があると言われています。
Sex(生物学的な性別)、Gender Identity(自身が認識する性別)、Sexual Orientation(性的指向)、Gender Expression(性表現)。
それぞれの頭文字をとって「SOGIE(ソジー)」と呼ばれることもあります。
Sex:生物学的な性別
生まれた時に、外性器や染色体など、身体的な特徴に基づいて判断される性別のことです。
一般的に男性・女性に分けられますが、インターセックスのように、典型的などちらにも当てはまらない場合もあります。
Gender Identity:自身が認識する性別
自分自身が自分の性別をどう認識しているか、ということです。
身体的な性別とは関係なく、「自分は男性だ」「女性だ」「どちらでもない」「わからない」など、人それぞれです。
トランスジェンダーの方は、この性自認と生物学的な性別が一致しないと感じています。
Sexual Orientation:性的指向
どのような性別の人に恋愛感情や性的な関心を抱くか、ということです。
異性に向く(ヘテロセクシュアル)、同性に向く(ホモセクシュアル:ゲイ、レズビアン)、両方の性に向く(バイセクシュアル)、性別に関わらず惹かれる(パンセクシュアル)、誰にも惹かれない(アセクシュアル)など、多様なあり方があります。
Gender Expression:性表現
服装、髪型、言葉遣い、仕草など、自分自身がどのような性別として表現するか、ということです。性自認や性的指向とは必ずしも一致しません。
例えば、性自認が男性であっても、社会的に「女性らしい」とされる服装を好む人もいます。
これらの4つの要素は、それぞれ独立しており、組み合わせも人によって様々です。
この多様性を理解することが、LGBTQ+への理解の第一歩となります。
なぜ職場でLGBTQ+への配慮が重要になったのか

近年、企業においてLGBTQ+への配慮やインクルージョンの取り組みが重要視されています。
その背景には、いくつかの理由があります。
- 人権意識の高まり: 全ての人が自分らしく、尊厳を持って生きる権利があるという考え方が、国際社会で広く共有されるようになりました。
企業にも、従業員の人権を守る責任があるという認識が広がっています。
- ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進: 多様な人材を受け入れ、それぞれの能力を最大限に活かすことが、企業の成長に不可欠であるという考え方(D&I)が浸透してきました。LGBTQ+当事者も、その多様な人材の一部です。
- 人材確保と定着: LGBTQ+フレンドリーな企業文化は、優秀な人材を引きつけ、従業員のエンゲージメントを高め、離職率を低下させる効果が期待できます。
- イノベーションの促進: 多様な視点や価値観が集まることで、新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなります。
- 企業イメージとブランド価値の向上: LGBTQ+への配慮を示すことは、社会的に責任ある企業としての評価を高め、顧客や投資家からの信頼を得ることにつながります。
これらの理由から、多くの企業がLGBTQ+インクルージョンに積極的に取り組み始めています。
LGBTQ+当事者が社会で直面する困難
一方で、LGBTQ+当事者の方々は、社会生活を送る上で様々な困難に直面することがあります。
職場における理解不足と差別
- アウティング: 本人の許可なく、性的指向や性自認を第三者に暴露されること。
- ハラスメント: 性的指向や性自認に関する侮辱的な言動や、からかい、いじめ。
- 採用・昇進での不利益: LGBTQ+であることを理由に、採用されなかったり、昇進・昇格で不利な扱いを受けたりすること。
- カミングアウトへの不安: 差別や偏見を恐れて、本当の自分を隠して働かざるを得ない状況。
結婚や医療制度上の不平等
- 法律婚ができない: 日本では同性婚が法制化されていないため、同性カップルは法律上の夫婦として認められず、相続、税制上の優遇、社会保障などで異性カップルと同じ権利を得られません。
一部自治体ではパートナーシップ制度が導入されていますが、法的な効力は限定的です。 - 医療現場での困難: パートナーが入院した際に家族として面会が制限されたり、手術の同意ができなかったりする場合があります。
- 性別移行に関する医療アクセス: トランスジェンダーの方が性別移行を望む場合、ホルモン療法や性別適合手術などが必要になりますが、保険適用や医療機関へのアクセスに課題があります。
家族向けサービス利用時の障壁
- 住宅ローン: 同性カップルが共同で住宅ローンを組む際に、法的な夫婦ではないため審査が通りにくい場合があります。
- 子育て支援: 家族向けの公的なサービスや民間の割引などが、法律上の親子関係や夫婦関係を前提としている場合があり、利用しにくいことがあります。
- 公的書類の性別欄: 戸籍や住民票などの公的書類の性別欄が男女の二択しかないため、トランスジェンダーやXジェンダーの方などが困難を感じることがあります。
これらの困難は、社会の制度や人々の意識が、まだ性の多様性に対応しきれていないことから生じています。
【具体例で解説】企業が取り組むべきLGBTQ+インクルージョン

企業は、LGBTQ+当事者を含め、全ての従業員が安心して働ける環境を作るために、具体的な取り組みを進めることが求められます。
多様性を尊重する姿勢を明確に示す
- 経営層からのメッセージ発信: トップがLGBTQ+インクルージョンの重要性を理解し、積極的に推進する姿勢を社内外に示す。
- 就業規則等への明記: 性的指向や性自認に基づく差別を禁止することを明確に規定する。
- 福利厚生制度の適用範囲拡大: 慶弔休暇、育児・介護休業、住宅手当、家族手当などの福利厚生を、同性パートナーやその子どもにも適用できるように見直す。
- アライ(Ally)の表明: LGBTQ+を理解し支援する「アライ」であることを従業員が表明しやすい文化を作る。
(例:レインボーカラーのグッズ配布、ステッカー表示など)。
LGBTQ+社員にとって働きがいのある環境整備
- 相談窓口の設置: LGBTQ+に関する悩みや困りごとを安心して相談できる窓口を設置する。
(人事部、専門のカウンセラーなど)。 - 「誰でもトイレ(オールジェンダートイレ)」の設置: 性別に関わらず誰もが利用しやすいトイレを設置する。
- 通称名の使用許可: 戸籍上の名前だけでなく、本人が希望する通称名を使用できるよう社内システムや名刺などを整備する。
- 服装規定の見直し: 性別にとらわれない、柔軟な服装規定を導入する。
LGBTQ+に関する理解を深める研修機会の提供
- 全従業員向け研修: LGBTQ+の基礎知識、SOGIE、当事者が直面する困難、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)などについて学ぶ機会を提供する。
- 管理職向け研修: 部下のカミングアウトへの対応方法、ハラスメント防止、インクルーシブなチーム作りなど、管理職としての役割を学ぶ。
- eラーニングの活用: 時間や場所を選ばずに学べるeラーニングコンテンツを提供する。
これらの取り組みは、LGBTQ+当事者だけでなく、全ての従業員にとって働きやすい環境づくりにつながります。
まとめ

この記事では、「LGBTQ+とは?」という言葉の定義から、多様な性のあり方(SOGIE)、当事者が直面する社会的な困難、そして企業に求められるインクルージョンの取り組みについて解説しました。
LGBTQ+は、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア、クエスチョニング、そして「+」に含まれるさらに多様なセクシュアリティの頭文字をとった言葉です。
性のあり方は、生物学的な性、性自認、性的指向、性表現という要素の組み合わせで成り立っており、非常に多様であることを理解することが大切です。
残念ながら、現在の社会では、LGBTQ+当事者が職場や制度、日常生活の中で様々な困難に直面しています。
誰もが自分らしく、安心して暮らせる社会を実現するためには、私たち一人ひとりが正しい知識を身につけ、多様性を尊重する意識を持つことが重要です。
企業においては、LGBTQ+インクルージョンを進めることが、人材確保、イノベーション促進、企業価値向上につながります。
明確な方針を示し、具体的な環境整備や研修を行うことが求められます。
この記事が、LGBTQ+への理解を深め、よりインクルーシブな社会について考える一助となれば幸いです。
まずは身近なところから、多様な性のあり方について関心を持ち、学んでいくことから始めてみませんか。